MASH-ROOM Magazine

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宇多田ヒカル「Fantome」レビュー

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今日はちょっと真面目に書きます。
宇多田ヒカルの新アルバム「Fantome」のアルバムレビュー記事です。
8年ぶりに出されたこのアルバム。っていうかね、僕宇多田クッソ好きなんでもう発表されたときから毛穴が開いて戻りません。どうしてくれるんですか。

というわけで1曲めから感想いきます。感想。

1,道

まずダンスチューン始まりが結構意外だった。もっと下からスタートしていくと思ってた。
結構はじけてるリズムトラックと「悲しい歌もいつか懐かしい歌になる」って1文で思ったのが、過去をイメージしてるんじゃないかなってこと。
2ndアルバムくらいのR&Bガッツリな宇多田を踏襲した上でのこの「道」
「過去の私も素敵だけどこれから私が歩む道も素敵なのよ〜」みたいなニュアンスで僕は受け取りました。
あとやっぱり曲中の「あなた」はお母さんだよねえ…


2,俺の彼女

これ俺一番好きだった。
この曲すごい歌手としての宇多田の天才具合が出てる。
歌詞が「俺」と「俺の彼女」、つまり男目線と女目線の部分があるんだけど、それを歌い方、声の出し方で表現してる。それやばくない?
この時歌ってる男性は「僕」ではなく「俺」って言いそうな、男性像。それを声の出し方でグワッって表現してるんですよ。
歌の実力がマジですごい。
歌詞の流れもヤバイよね。「俺」はずっと自信満々で「俺の彼女マジやべーぜ」つってんのに最後らへんで急に「いやでも多分飽きられるわ…」ってなるの。
こわ、天才かよ、天才だわ。

3,花束を君に

これはさんざん言われてるけどダイレクトにお母さんの歌。自殺しちゃったお母さんへの歌。
朝ドラで流すのかよみたいな。
この曲にかぎらずではあるんだけど、めっちゃドラムうるさい。なんでだ?なぜかアコースティックに流れるような伴奏と歌に「シャンシャンシャンシャン!!!」ってなるドラム。
宇多田は楽器の一音一音のニュアンスまで全部監修する(昔コーラス隊のブレスの深さまで指示してた映像を見た)からこれも絶対意図がある。

「花束を君に」の考察はこの記事も深く考察してるので是非

天才、宇多田ヒカル活動再開。新曲2曲に仕組んだ彼女の思惑について6000字。

4,二時間だけのバカンスfeaturing椎名林檎

天才と天才が手を取り合ってすべてをなぎ倒してる曲です。
良いに決まってんだろボケ!!!!!!!
宇多田と林檎嬢がやっと二人気楽に歌えるねみたいなのを浮気に例えて歌ってる感じかな。
僕個人が気になった点がいくつかあるんですけど、
まず出だしのメロディ
めっちゃ「シドと白昼夢」じゃね???


宇多田さん、林檎嬢の昔の曲リスペクトってことなのかなと。
あと歌詞にもそれぞれの過去の曲からの引用か?みたいな点が数点。

1番Aメロの「ハイヒール」からの2番椎名パートの「おとぎ話」はMovin' on without you
ラスサビ前の「砂の上」ってワードは椎名林檎もカバーしたLetters
なんだなんだなんだおい、芸が細かすぎるぞ

こちらも地下室TIMESの記事があります

ついに宇多田ヒカル新曲にて椎名林檎と共演 曲のテーマは盛大な二人のイチャコラ

5,人魚

お伽話の続きなんて誰も聴きたくないなんて歌っておきながら次の曲思いっきりお伽話じゃね???
しとやかにアルペジオが響いてそれにゆったりとした歌。うんうんうん人魚姫っぽいよ。
でもね、これもなんですけどドラムうるさくない????いやうるさいっていうのはボリュームがでかいとかではないんだけどこの曲ならもっと静かなドラムを使うのが普通だったのでは?
なんなら3分15秒くらいのとこから左右2つドラムなってるからね。違うパターンの。
タムをボンボン叩くドラムとスネアをぽスぽス叩くドラムが左右で別れてる。
なんだろうこれ、面白い。すごい面白いんですよ。
きっとなんかの意図があるんだろうけど俺わかんねえよ〜〜〜〜〜

6,ともだちfeaturing小袋成彬

巷で話題のゲイ、レズビアンがノンケに恋をするという恋愛曲。
小袋成彬って誰?って人いると思うんだけど、俺もそうだったけど、作曲とかもしちゃうレコード会社の社長っぽいすね。水曜日のカンパネラの「ナポレオン」とかやったらしい。

海外のビアンから「いやノンケへの恋への歌とか普通すぎひん?」って言われて宇多田本人が「ってかいつウチがノンケって言ったっけ?w」みたいなリプを送ったのが話題になってましたね。

これはまぁ歌詞の方向性は置いておいて、すげえ!ってなったのが
「胸の内を明かせたなら、いやそれは無理」のところ。
「いやそれは無理」の「いや」が「いや(笑)」なんですよ。
しかもただの笑いじゃなくて自嘲した笑い。なんなの一瞬の息遣いでそれを表現するのやば。

7,真夏の通り雨

すごいシンプルにピアノの弾き語りから入る感じは「誰かの願いが叶うころ」と似た点はあるかな。
しかしそれ以上に作り込まれた細かい点。
ベースの入るタイミングとかが、逆にちょっと不安なところから入るんですよ。
歌詞からくる通りそんなに明るい曲じゃないから、楽器の使い方ですら不安を表現している。

こちらも地下室の記事があります。

天才、宇多田ヒカル活動再開。新曲2曲に仕組んだ彼女の思惑について6000字。

8,荒野の娘

健気に荒野に生きる女の子の歌。
宇多田ヒカルって図書館開けるんかってくらい本持ってるし読んでるんだって。
そんで「荒野の狼」って本があるんですよ。

主人公ハリー・ハラーは、市民的な平凡な毎日を繰り返し過ごす生活に対して疑問を持っていた。そして、彼は、そのような生活から逃げようとする孤独なアウトサイダーだった。

市民的な生活に馴染もうとする自分と、その生活を破壊しようとするおおかみ的な自分。二つの魂を持つハリーは、自殺を一つの逃げ道として捉え、それによって、かろうじて精神の均衡を保ち、自分のことを「荒野のおおかみ」だと考えていた。

ある日、友人の教授が、家の夕食に招いてくれた。そこで、彼は、市民的に洗練されたゲーテ肖像画や自分の主張した反戦論をこき下ろす新聞記事を目にしてしまう。そのせいで、彼は、生きる希望を無くし、街を彷徨い歩く。しかし、ハリーは、たまたま入った居酒屋で、ヘルミーネという少女と出逢う。それは、彼女が、少年時代にハリーの友人であったヘルマンと似ていたからであった。ヘルミーネの存在によって、ハリーは、再び生きる希望を取り戻そうとする。そして、ヘルミーネは、ハリーが軽蔑しているジャズダンスを教えこもうとするが……。


つまり?
この「荒野の狼」を宇多田なりに解釈したのが「荒野の娘」なのかそれとも本の中で出てきた「ヘルミーネ」という人物を唄った歌が「荒野の娘」なのか
もしかしたら本を読んでみると無茶苦茶腑に落ちるかもしれません。

9,忘却featuringKOHH

宇多田自身がKOHHのファンだったらしいです。
正直これも歌詞の解釈は完全にお母さん。
KOHH自身も母親が薬物依存者で一悶着あったらしいので、ラップパートも歌のパートもむちゃくちゃ感情的。本当にその人の奥底にあった感情を吐き出してる。
僕よく意志が強い歌詞を聞くと「怖い」って言うんですけど、これめっちゃ怖いです。

演奏なんですけど後ろのギターが機械的にノイズっぽいのを出してるのがいいし、最後心臓の音のサンプリングで終わるのも命を意識させてヤバヤバのヤバですね。

10,人生最高の日

急に明るくなったなオイ。
多分ですけど宇多田がこのアルバム作るってなったとき相当苦労したんだと思います。
曲をひねり出したろうし。
んで最後に開放的にちょっとぱーって開けたのかな。
そんな感じがします。
きっと、これから音楽活動をもっと続けるぞ!って決意もあるでしょう。
シェイクスピアだって驚きの展開、それはこのアルバムが表現しているのだろうし、それもまだ序章にすぎないんじゃないですかね。

11,桜流し

なんかのインタビューで「桜流しは最後以外ありえなかった」みたいなのを読みました。
この曲の並びで聞くとすごい泣けますね。
エヴァの劇場版で聞いたときはエヴァ自体の展開に「え?は?」ってなってたからこの曲聞いても「いやそれよりも!」みたいな気持ちになってちゃんと聞けてなかったなあと。
エヴァQが公開されたのが2012年、藤圭子さんが亡くなったのが2013年8月
このアルバム内で聞くと「これもお母さんの歌か」となりそうだけど、時期がズレてるんですよ。
ただやっぱ母性は意識したらしいから、亡くなる前に別居したそのことだったりするのかなぁとか。
うーんわからん!
途中で入ってくるドラムがいかついっすね。







まとめ

・お母さん大好きだったんだね…
・なんかドラムでかくない?
・総じて最高&天才じゃない?

これ人生でずっと聴けるアルバムになると思います。
宣伝も特にしてないのに全米チャート6位とったらしいし音楽性はマジでトップレベル。
これ日本の歌姫として最高のアルバムになってます。
ぜひ買って聞いてみよう!!!!!