MASH-ROOM Magazine

邦楽ロックのWebマガジン的なソレです。

チャットモンチーの解散をただ嘆くだけでいいのか

natalie.mu

ついにきましたね。チャットモンチーの”完結”

このブログでもちょくちょくチャットモンチーの名前は出してたんですけど、チャットモンチーって凄いんですよ。

現代における”ガールズバンド”の常識を作った偉大なバンド。

 

PRINCESS PRINCESS以降のガールズバンドってちょっとマニアックなんですよね。中ノ森バンドとか少年ナイフとか。キャッチーなんだけど、評価の広がりは音楽玄人の間にあったような感じがする。雰囲気だけど。

お茶の間に、普通に中高生が聞くガールズバンドってのを作ったのはチャットモンチーだと思います。

 

で、知ってる人も多いと思うんだチャットモンチー

でも非楽器演奏者とかなら「シャングリラ」とか「風吹けば恋」とかそこら辺で留まってる人もいると思うんです。

いい機会なので魅力を改めて語りつつ、果たして「解散(完結)悲しい(T_T)」で終わっていいのかというところを考えてみましょう。

 

 

作曲が天才

以前書いたこの記事。

earphonefuzzyclub.hatenablog.com

ここでも言ってるんですが、チャットモンチーの作曲方法は独特で、できたものも独特。

作っていく過程と構成音の少なさが類を見ない作り方。

僕はその中でも、”構成音の少なさ(シンプルさ)”にとても惹かれるんですよ。

前述の記事で紹介した以外でも「バスロマンス」

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これはコードがAメジャーとDメジャーのみでリフ(繰り返されるフレーズ)が構成されてて、

しかもその2つのコードは初心者でもパッと押さえられるコード。

「良い曲は難しい」なんてことはない、そんなのはうっすらと思っていたんですがチャットモンチーで本当なんだと感激。

ギターやってる人は考えてみてくださいよ。マジでAメジャーとDメジャーでこんなキャッチーでかわいいフレーズが作り出せるんですよすごくないですか。

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「橙」だって凄い。

これなんとこれ、Gメジャー→Dメジャー→Cメジャー

どれもめちゃめちゃ簡単で初心者が最初にやるようなコード。マジでめちゃめちゃ簡単。格ゲーで言うならパンチボタン押しただけ。コマンドとかする必要ない。昇竜とか使わない。

それでシングルにできる良曲を作り出せるんですよ。

本当にシンプルなもので素敵な曲を作る、そこに僕は感動しています。

 

作詞が天才

詞もまた天才。

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今までひとつでもなくせないものってあったかな
今までひとつでも手に入れたものってあったかな
どうか無意味なものにならないでね
今すぐ意味のあるものになってね
あの人がそばにいない
あなたのそばに今いない
だからあなたは私を手放せない

 

攻撃力高すぎ!!

状況として察するに、

あなた(男)とあの人(女)と(女)がいて、
あなたあの人が好きで、でもそれは報われてなくて、だからで妥協してる。この妥協の時間がどうか意味のある、報われるものになると願っている。

みたいな感じですかね。

それを、普通の女の子(めちゃめちゃかわいいけどな)のえっちゃんが歌うという、この、なんだ、エモすぎるでしょ。現実的な切なさがあるし、「どうか」という懇願も胸を締め付けられる。

きっと同じ歌詞を違う人が歌ってもここまでの攻撃力はないでしょう。

 

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誘ってもいいですか
だって、あなた、意気地ないから
誘ってもいいですか
だって、あなた、意気地あるから

言われたすぎるだろ〜〜〜〜!!!!!!

 

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この「親知らず」は文学的にも高く評価されてて、平成に残る楽曲でも上位の”名詞”具合。

 

親知らず(歯)の話→歯磨きの思い出→家族の話とセクションが移り変わるんですが、歯から歯磨きの思い出への移り方が素晴らしい。

親知らずが生えてきて、”私”はきっと鏡で確認しようとしたのでしょう。
歯医者は怖いから、とりあえず一人暮らしの洗面所の鏡で確認。
口を思いっきりあけないと親知らずなんて見えません。思いっきりアーと口を開けます。
これって何かに似てるなぁ…あ、そっか小さい頃お母さんに歯磨きしてもらったときか…

1番Aメロの「大きく口を開いて」から「仕上げのブラシを」の間にこの回想が含まれているんです。

詩人だ…詩人すぎる…

 

「染まるよ」なんかは川谷絵音氏も絶賛してた。

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フラれちゃった夜、あなたの吸っていたタバコを吸って、美味しくなくて、なんでこなんなものをあの人は好きだったんだろう。あの人はなんで私をフッたんだろう。感情もモヤモヤして黒く染まっていく。
そんな事を考えながら夜が更けるまで散歩する。そうしていくと気持ちの整理がついてくる。あなたのくれた言葉、正しくて色あせない。でも、もういらない。
私のこと忘れないでね。私は私として生きていくから。黒くなっていた感情も朝焼け色(白っぽい)に染まっていった。

これが概要。

この詞の素晴らしいところは、タバコの煙が感情の変異を暗喩しているところ。そして「でももういらない」で曲が転調しているんですが、感情も転調しているところ。

楽曲と歌詞が完全にリンクしている本当に”歌”だなと感じさせる一曲。

この曲を真似てタバコを吸ってみたりした人も多いんでないかな。

 

人数が変わってから聞いていない君へ

ドラムが脱退してから聞かなくなった人は本当に多い。僕はとてももったいないと思います。

たしかにドラムのくみこんはただドラムを叩いてただけじゃなくて、楽曲に多彩な色を加えてたし、名詞と言われてる曲はほとんどくみこん。メンバーの良いお姉ちゃんでもあった。

だから脱退したことで、漠然と「魅力が減った」と考えた人も多いことでしょう。

2人時代だって聴き応えは十分にあると僕は思っていました。

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たしかに、その…ドラムは結構下手だし、ベースレスの楽曲もあるし単純に腕が減ったから音も薄い。やれることが限られてるから”シンプル”が悪い方向に働いてるとも言える。

ファン補正もあるからだけど、主要メンバーが抜けたとしてもガンガンと曲を作っていく姿勢にも感激したし、えっちゃんのスキルの向上具合にビックリした。

ドラムに彩りが入れれないのなら、ということで残った2人で出来る限りの工夫が沢山あったんです。「満月に吠えろ」とかギターソロ、今までのチャットの中でもすごいかっこいいやつだと思うし。

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ブルースハープ(ハーモニカみたいなやつね)を入れてみたり、

 

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それをルーパー(録音して繰り返してくれるエフェクター)を駆使して楽器を入れ替わりやったり、とにかく楽曲創作においてありとあらゆる工夫がしてありました。

それを絶対2人だけでやるという、職人具合。「変身」というアルバムの曲はレコーディングの際に「ライブで不可能なパート」は入ってないんです。楽器をやってる人はそこに注意して聞いてもらうとすげーなとなるかも。ギター2本入っててもそれを1人で弾くようにできてたりね。片手ドラム片手シンセとかそういうのもやってます。

その根性はどんなアーティストも顔負けだと思います。

 

そして4人時代。

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サポートにドラムとキーボードを加え、重厚なバンドサウンドを目指した時期。

またこの段階でも「こんなのはチャットじゃない」という意見もありました。

めちゃめちゃキーボード重視だったり、ドラムがハイスタのツネさんだから早いビートとかも使えて、今までのチャットの雰囲気じゃないとか。

でも手札の増えた2人の作り出す楽曲、そして既存の楽曲のアレンジにワクワクしませんか?

過去を汚していることはまったくないんですよ。

「3人(2人)でできないことはやらない」というのが今までにありました。でもこのままじゃ新しい発見はできないし、進化できない。そう判断した2人は立派な職人であり、アーティストです。常に進化し続けている。大事なのは過去の盛り上がりを維持することじゃなくて、素敵な曲を作っていくことなんですから。

 

そして後期2人時代。

こちらは残念ながら、資料がないんですけど、サポートではなくまた2人時代に戻して、今度はエレクトロの要素を加える。

ドラムが弱かったという反省は彼女たちの中にもあったのでしょう。エレクトロなリズムを加えて過去の楽曲をアレンジしていたようです。そしてそれが新しいチャットモンチーになっていった。

ぜひ聞いてみたい…どっかにあるなら教えてください。

 

総括すると、彼女たちは脱退があっても確固たる信念で常に前進し続けるアーティストだったんです。

そういうバイアスがあればきっと2人時代の楽曲にも「音が薄い」とか「ドラム下手」とかそれ以外にもポジティブな発見があるはずなので聞き返してみてください。

 

そして”完結”へ

チャットの歴史は前述までの通り。

ここから分かることは、彼女たちは「変わり続ける」というのが信念としてありそうです。

同じ形態で、たまにバラードだして、ジャズっぽい曲だして…のような変化じゃなく。根幹から変えていって音楽に新しい風を吹かせるような変化を常に求めて研究していた。

だから”完結”という表現をしているんだと思います。

3人時代のガールズロックバンド→2人時代の実験バンド→4人時代の厚みのある様々なロックバンド→新2人時代のエレクトロ混じりのバンド

じゃあ次は何をやるか?

それにはきっともう「チャットモンチー」という名前が必要なくなった、いえ、言い方が悪くなってしまいますが、邪魔になったんじゃなかろうか?

新しい何かがきっと2人のビジョンにはあるんだと思います。口ばっかりの「解散した後も音楽は続けていきます」じゃなくて、もう決まっている何かをやるために一度”完結”させてからにした、これなんだと思います。

だから解散じゃなくて完結。子育て忙しいってのもありそうだけど。

 

そう思うと、ただ解散を嘆くのはひとまず待ちたい気持ちがあります。

歴史を辿っていくと見えてきた”解散”ではなく”完結”と表記した理由。

 

だから僕はこの完結に期待したい。

そしてなるべく早く、えっちゃんとあっこびんの、(プラスくみこんも何らかでの創作として合わせて)新しい作品が見たい。

みんなも嘆くだけじゃなく、ふと彼女たちの栄光を振り返って期待してみましょう。

 

 

 

とかなんとか言っといてずっと追いかけてきたバンドがこうなるのは寂しいよな〜〜〜〜〜正直ね。しょうがないよね。

頑張って欲しい!早く次の何かを聞きたい&見たい!